確定申告 少額減価償却資産の取り扱い

少額減価償却資産の制度は、青色申告や法人が活用できる節税手法の一つで、一定の金額以下の資産を購入した場合、購入した年に全額を経費として計上できる制度です。これにより、手続きが簡単になるだけでなく、節税効果も得られます。この仕組みを正しく理解し、事業経費に賢く活用する方法を解説します。


減価償却資産とは?

減価償却資産とは、事業用に使用される資産のうち、使用期間が1年以上で取得価額が10万円以上のものを指します。例えば、パソコンや事務机、車両などが該当します。これらの資産は購入時に全額を経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費に計上する「減価償却」という方法で処理されます。


少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例では、以下の条件を満たす資産について、購入した年に全額を経費として計上できます。

  1. 対象となる資産の条件
    • 取得価額が30万円未満の減価償却資産。
    • 事業のために使用する資産であること。
  2. 利用できる申告方法
    • 青色申告を行っている個人事業主または法人が対象。
    • 白色申告者はこの特例を利用できません。
  3. 年間の上限額
    • 年間300万円までの資産が特例の対象になります。この範囲内であれば、複数の資産を一括して経費計上できます。

少額減価償却資産の例

例1:パソコンの購入
事業で使用するために20万円のパソコンを購入した場合、この特例を利用すれば、購入した年に全額を経費として計上できます。通常の減価償却では、4年間かけて分割計上する必要がありますが、特例を利用することで簡便に処理できます。

例2:店舗用の備品購入
店舗の装飾用に50,000円の棚と70,000円の照明を購入した場合、これらも特例の対象となります。いずれも30万円未満であり、年間300万円以内であれば一括で経費に計上できます。


少額減価償却資産とその他の資産処理との違い

  1. 一括償却資産
    • 取得価額が10万円以上20万円未満の資産は「一括償却資産」として扱い、3年間で均等償却します。
    • ただし、青色申告では少額減価償却資産の特例を利用することで、全額を購入した年に経費計上可能です。
  2. 通常の減価償却資産
    • 取得価額が20万円以上の資産(特例を利用しない場合)は、耐用年数に応じて毎年一定額を経費に計上します。

比較例

  • 20万円のパソコンを購入した場合:
    • 特例を利用 → 20万円を購入年に全額計上。
    • 通常の減価償却 → 4年間で分割して計上(耐用年数が4年の場合)。

特例の利用手続き

少額減価償却資産の特例を利用するには、以下の手続きを行う必要があります。

  1. 青色申告を行う
    特例は青色申告者に限定されているため、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出しておく必要があります。
  2. 固定資産台帳の作成
    資産の取得日、取得価額、用途などを記載した固定資産台帳を作成し、税務署に提出する必要はありませんが、税務調査に備えて保管しておきます。
  3. 確定申告書への記載
    特例を利用した場合、その内容を確定申告書に反映します。具体的には、少額減価償却資産として計上した金額を損益計算書や青色申告決算書に記載します。

注意点

  1. 年間300万円の上限に注意
    特例を利用できる資産の合計額は1年間で300万円までです。これを超える資産については、通常の減価償却を適用する必要があります。
  2. 事業用資産に限定
    プライベートで使用する目的の資産や、事業と無関係の資産は特例の対象になりません。
  3. 固定資産台帳の整備
    特例を利用する場合でも、固定資産台帳を整備しておく必要があります。これがないと、税務調査で指摘を受ける可能性があります。
  4. 白色申告者は対象外
    白色申告の場合、この特例は利用できません。青色申告のメリットの一つであるため、制度を活用したい場合は早めに青色申告の準備を進めましょう。

少額減価償却資産の節税効果

事例1:飲食店経営者のAさん

  • 年間所得:500万円
  • 資産購入:店舗用のテーブル(15万円)と椅子(10万円)を購入

通常の減価償却では、これらを数年間に分割して計上する必要がありますが、特例を利用して全額を購入年に経費計上。結果として、課税所得が475万円に減少し、所得税と住民税を大幅に節税できました。


まとめ

少額減価償却資産の特例は、事業で使用する資産を効率的に経費計上できる優れた制度です。特に青色申告を行っている場合、大きな節税効果を得られる可能性があります。ただし、年間300万円の上限や、事業関連資産であることなどの条件をしっかり守ることが重要です。適切な管理と手続きを行い、事業経費を効果的に抑えるために、この特例を活用しましょう。

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