年金受給者も、一定の条件を満たす場合には確定申告が必要になります。特に公的年金を主な収入源としている人は、自分が確定申告を行う必要があるのかどうかをしっかり確認することが大切です。年金に対する課税ルールや控除の仕組みを理解し、正確な申告を行いましょう。
年金受給者が申告義務を負う条件
公的年金を受給している場合、すべての人が確定申告を行う必要があるわけではありません。以下の条件に該当する場合のみ、申告義務が発生します。
- 年金収入が400万円を超える場合
公的年金等の収入が年間400万円を超える場合には、確定申告が必要です。 - 年金以外に20万円以上の副収入がある場合
年金以外にアルバイト収入や投資収益など、副収入が年間20万円以上ある場合は、確定申告を行わなければなりません。 - 税金の還付を受ける場合
医療費控除やふるさと納税などの控除を受けたい場合は、申告義務がなくても自ら確定申告を行うことで還付を受けられることがあります。
年金に対する課税ルール
公的年金等には「公的年金等控除」という制度が適用され、一定額が非課税となります。この控除額は年齢や受給金額によって異なり、所得税の負担を軽減する仕組みです。
公的年金等控除額の計算(2023年現在)
- 65歳未満
- 年金収入130万円以下 → 控除額70万円
- 年金収入130万円超〜410万円以下 → 控除額:70万円+(年金収入-130万円)×25%
- 年金収入410万円超 → 控除額:195.5万円+(年金収入-410万円)×15%
- 65歳以上
- 年金収入130万円以下 → 控除額120万円
- 年金収入130万円超〜410万円以下 → 控除額:120万円+(年金収入-130万円)×25%
- 年金収入410万円超 → 控除額:195.5万円+(年金収入-410万円)×15%
例:65歳以上の年金受給者の控除計算
- 年金収入:200万円
- 控除額:120万円+(200万円-130万円)×25% = 137.5万円
- 課税対象額:200万円 – 137.5万円 = 62.5万円
確定申告が不要な場合
年金収入が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下の場合、通常は確定申告の義務はありません。この場合、市区町村が自動的に所得を把握して住民税を計算します。
注意点
ただし、医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税などを適用したい場合は、確定申告が必要になるため、手続きの有無を確認してください。
年金受給者が利用できる控除
- 基礎控除
すべての納税者に適用される控除で、48万円が非課税となります。 - 公的年金等控除
年金収入に応じた控除が適用されます(上記参照)。 - 配偶者控除
配偶者が所得38万円以下の場合、最大38万円の控除が受けられます。 - 医療費控除
年間10万円を超える医療費を支払った場合、超過分が控除対象となります。 - 生命保険料控除
生命保険や介護保険料を支払っている場合、一定額が所得から控除されます。
確定申告の手続き方法
年金受給者が確定申告を行う場合、次のような手順で進めます。
- 必要書類の準備
- 「公的年金等の源泉徴収票」:年金支給元から送付されます。
- 医療費控除や寄付金控除を申請する場合は、領収書や証明書も必要です。
- 確定申告書の作成
国税庁のe-Taxや紙の申告書を利用して申告書を作成します。簡易な「確定申告書A」が利用可能です。 - 申告書の提出
書類が揃ったら、最寄りの税務署に提出するか、e-Taxでオンライン申告を行います。 - 還付金の受け取り(還付申告の場合)
指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。
よくある疑問と注意点
- 年金控除を受けても税額が発生することがある?
年金収入が控除額を超える場合、その超過分に対して税金が発生します。特に副収入がある場合、注意が必要です。 - 所得税と住民税の違いに注意
年金収入が非課税となる場合でも、住民税の申告が必要な場合があります。各市区町村のルールを確認しましょう。 - 配偶者控除や扶養控除を忘れない
配偶者や家族を扶養している場合、申告で控除を受けられることがあります。
年金受給者の節税例
Aさん(65歳以上)は、年間年金収入が250万円、医療費として30万円を支払いました。Aさんの場合、公的年金控除と医療費控除を申請することで、所得税と住民税が大幅に軽減されます。
控除額の計算
- 公的年金控除:157.5万円
- 医療費控除:30万円 – 10万円 = 20万円
- 課税対象額 = 250万円 – 157.5万円 – 20万円 – 基礎控除48万円 = 24.5万円
結果
課税対象額が低くなり、所得税は非常に少額、住民税も軽減されます。
まとめ
年金受給者が確定申告を行うかどうかは、年金収入や副収入の金額によって異なります。自分の収入状況を把握し、公的年金等控除や各種控除を活用することで、税負担を軽減することが可能です。申告義務の有無を確認し、適切に対応することが大切です。